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2025/07/18
Humanscaleの挑戦 ─ サステナビリティで「ネット・ポジティブ」な未来を築く

Humanscaleについて
1983年に創業したアメリカの家具ブランド Humanscale(ヒューマンスケール)は、「より少ない資源で、より多くの成果を生み出す」という理念のもと、働く人の健康と快適性を高める高性能なエルゴノミクス製品の設計・製造をリードしています。
機能性・シンプルさ・耐久性・持続可能性を重視した製品づくりを行っており、著名なデザイナーとのコラボレーションによって数々の賞を受賞しています。
また、B Corp※1認定企業として、地球環境に良い影響をもたらす製造活動が高く評価されています。
これは、Humanscaleが製品一つひとつを通じて、世界をより良い場所にしていくことを意味しています。
※1 B Corp(B Corporation、Bコープ)とは、アメリカの非営利団体B Labによる国際認証制度。株主だけでなく、従業員・顧客・地域社会・環境など、すべてのステークホルダーに利益をもたらす活動を評価し、公益性の高い企業に与えられる。認証取得には厳格な審査があり、取得後も定期的な更新や活動報告が求められる。B CorpのBはBenefit(利益)に由来。

2025年6月4日、HumanscaleのCSO(チーフ・サステナビリティ・オフィサー)である Jane Abernethy (ジェーン・アバネシー)氏が来日し、当社でサステナビリティ戦略について講演を行いました。彼女の語るHumanscaleの取り組みは、単なる環境配慮を超え、「ネット・ポジティブ(Net Positive)※2」という新たな企業のあり方を示すものでした。
※2 「ネット・ポジティブ(Net Positive)」とは、企業や製品が環境や社会に与える影響を「プラス」に転じるという考え方。単に「悪影響を減らす(Less Bad)」のではなく、「良い影響を生み出す(More Good)」ことを目指す。
Humanscale社はこの概念をいち早く導入し、製品のライフサイクル全体を通じて、環境・社会に対して実質的にプラスの影響を与えることを目標としている。

デザインの力で環境に貢献する
プロダクトデザイナーとしてキャリアをスタートしたアバネシー氏は、製品の素材を選び、構造を決定する立場にあるデザイナーこそが、環境負荷を減らす鍵を握っていると語ります。彼女は、製品デザインの初期段階から環境への影響を最小限に抑えるべきだと強調し、「私たちは、消費者が選ぶ前に、何を作るかを選ぶ立場にある」と、デザインにおける責任の重要性を強調しました。
「ネット・ポジティブ」への道
Humanscaleが本格的にサステナビリティに取り組み始めたのは2011年。顧客からのBIFMAレベル認証※3取得要請をきっかけに、社内で「単なる認証取得にとどまるのか、それとももっと踏み込むのか」という議論が起こりました。その結果、同社は「ネット・ポジティブ」、すなわち「環境に与える良い影響が悪影響を上回る」ことを目指すと決断しました。
この目標は、「リビング・プロダクト・チャレンジ(Living Product Challenge)※4」の達成などを通じて、定量的に測定可能な成果として実現されつつあります。
同社の「Path」チェアは、1脚当たり約10Kgのリサイクル素材(再生漁網を含む)を使用し、レッドリストと呼ばれる有害化学物質リストに該当する物質を一切使用していません。これは、製品自体が人と環境にプラスの影響を与えるというヒューマンスケールの理念を体現したものです。
※3 BIFMAレベル認証とは、北米のオフィス家具業界団体「BIFMA(Business and Institutional Furniture Manufacturers Association)」が策定した、家具のサステナビリティに関する認証制度。製品だけでなく、製造工場や企業の取り組みも含めて、環境負荷・健康・社会的影響などを多面的に評価。認証は3段階(LEVEL 1〜3)に分かれており、取得した加点数によってランクが決まる(LEVEL 3が最高ランク)。
※4 リビング・プロダクト・チャレンジ(Living Product Challenge)とは、世界で最も先進的で厳しい製品サステナビリティ基準。

Humanscaleのサステナブルへの取り組み – 害を減らすだけでは十分とは言えない
革新的な水資源管理
気候変動による水不足への対応として、アメリカとメキシコにある自社工場で雨水を100%活用しています。また、従業員に節水型シャワーヘッドの配布など、地域社会への貢献にも取り組んでおり、持続可能で革新的な水資源管理を実践しています。
すべての工場を太陽光発電に
業界で初めて全工場を100%太陽光発電で稼働させることに成功しました。これにより、Scope 1※5およびScope2※6の温室効果ガスを大幅に削減し、CDP(気候変動に関する情報開示プラットフォーム)への報告も継続的に行っています。
※5 Scope 1(直接排出): 自社が直接排出する温室効果ガス
※6 Scope 2(間接排出): 自社が購入した電力・熱の使用により間接的に排出する温室効果ガス
野生生物保護への貢献
製品開発だけでなく、WWF(世界自然保護基金)を積極的に支援し、野生動物の保護活動にも取り組んでいます。絶滅危惧種の回復を支援するプロジェクトを通じて、生態系の再生にも貢献しています。
素材の透明性と安全性
抗菌剤などの有害な化学物質を製品から排除する方針を明確に打ち出しています。これは、同社がユーザーの健康と環境保護の両立を目指す姿勢の表れです。




Humanscaleが示す未来のものづくり
「我々はまだまだすべきことがたくさんあります」—— このアバネシー氏の言葉が印象的でした。
この一言には、Humanscaleが現状に甘んじることなく、より高い理想の実現に向けて挑戦を続ける強い意志が込められています。
同社は、自社所有の太陽光発電の稼働、科学的根拠に基づいた気候対策目標の設定、持続可能な素材を用いた革新的な製品開発など、業界初の成果を数多く達成してきました。
アバネシー氏にとって、サステナビリティは達成すべき目標ではなく、常に進化し続けるプロセスです。
環境負荷の低減だけでなく、社会への好影響にも目を向けるHumanscaleの姿勢が、この言葉に凝縮されています。

Humanscale
業界初の取り組みの数々
- 2016年:Living Product Challenge 全項目達成を果たした初のメーカー
- 2017年:漁網をアップサイクルした初のコントラクト家具メーカー
- 2018年:Red List(有害化学物質リスト)を製品から除去した初の企業
- 2019年:製品素材・成分ラベルを体系的に公開した初の企業
- 2020年:PFAS*およびその他の有害化学物質を製品から排除した初の企業
- 2021年:すべての製造工程において、敷地内で回収した雨水を使用した初の企業
- 2021年:製品の大半が「Climate Positive(気候にプラスの影響を与える)」認証を取得した初の企業
- 2022年:すべての工場がTRUE Zero Waste(ゼロ廃棄物)認証を取得した初の企業
- 2024年:コントラクト家具業界で初めてB Corp認証を取得した大手アメリカブランド
※製品のほとんどの部分にはPFAS(有機フッ素化合物)が含まれていません。



左から順に
住商インテリアインターナショナル株式会社 代表取締役社長:久野 直毅
Humanscale CSO:Jane Abernethy(ジェーン・アバネシー)氏
Humanscale Country Manager:Lee Jinu(リ・ジヌ)氏
住商インテリアインターナショナル株式会社 DX推進部 部長:山口 徹
商品に関するお問い合わせは、当社営業担当もしくはこちらまで。