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- インタビュー
2024/04/24
株式会社RKKCS 東京オフィスリニューアルプロジェクト インタビュー
社長特命の極秘プロジェクトとして始まったRKKCS 東京支社オフィスのリニューアル。
「セレンディピティ」をキーワードに、オフィス内に散りばめられた工夫についてお伺いしました。
参加者紹介
※左から順に
株式会社RKKCS
企画室 室長 徳山泰之 氏 (左)
戦略室 室長 内藤亮介 氏 (左から2番目)
住商インテリアインターナショナル株式会社 (SII)
デザインユニット 田原 裕介 (右から2番目)
第1ユニット 吉田 直人 (右)
RKKCSについて
RKKCS徳山氏:弊社は熊本を本社とし今年で創業58年目を迎える会社です。自治体や金融機関向けのシステム開発およびサポートを主な事業としております。こちらのオフィスは、東京支社として機能し、関東以北のお客様を主な対象としたビジネスを展開しています。東京支社をこの場所へ移転してから約10年が経過し、現在は約150名の従業員が在籍しています。
東京支社オフィスリニューアルの背景
RKKCS徳山氏:東京支社のリニューアル計画は、現在のオフィス設立から約10年が経過し、老朽化した什器などが目立ち始めていたことや、事業規模の拡大により従業員も増え、手狭になってきたことなどもあり、新しいオフィス空間を目指して進められました。さらに、新型コロナウイルスの流行で在宅勤務を導入することになり、こうした働き方の変化も良い契機となりました。このリニューアル計画では、イノベーションやクリエイティブなアイデアが生まれる環境を作り出すことを目指しました。キーワードとして「セレンディピティ」を掲げ、他愛もない出会いや交流から生まれる偶発的な発見を促進することを目指しました。
また、東京支社は熊本に本社を置く私たちにとって特に重要であり、九州出身の従業員にとっても魅力的な働き場所となるよう努力しました。特に若い方々に対して、東京での就業を魅力的に感じてもらえるような環境を整えることも重要な目標の一つでした。
RKKCS内藤氏:SEやSI (システムエンジニアリングやシステムインテグレーション)は、通常顧客からの要望を受け、仕様書の作成、設計、納品、そして保守という流れを取ります。しかし、私たちはこの既存の流れを変え、「脱SI宣言」という新しい方針を打ち出し、自らサービスを創造し、顧客に提供するサービスプロバイダーへの転換を目指しています。社員は与えられた仕事をこなすのではなく、クリエイティブな思考を養い、真に価値あるものを自ら創造することが求められます。この新たな働き方への第一歩が、私たちのオフィスであり、日本のIT業界に対するイメージを改善するための取り組みです。
SIIの起用理由とスコープ
RKKCS徳山氏:オフィスのリニューアルについて、最初は相談相手がいない状況でしたが、私たちの希望を実現する為にインテリアの専門家であるSIIに相談を持ちかけ、細かな素材の選定を含むトータルコーディネートを請け負ってくださると言っていただき、正式に依頼することになりました。
SII田原:プロジェクトの初期段階では、お客様のオフィス環境を観察し、最新情報を把握するために什器メーカーなどのショールームを訪れるなどのリサーチから始めました。その結果、既存のオフィスをリニューアルすることを決定しましたが、ただのリニューアルではなく、想像を超える充実したオフィス空間の創造を目指しました。当初のリニューアル計画は、広くて美しいオフィスを構築し、座席数を増やすことに焦点を当てていましたが、新型コロナウイルスの流行により、働き方の見直しが必要となりました。また、コロナ収束後も考慮しながら、望ましいオフィス環境を検討しました。当プロジェクトでは、グリーンエリアの設計にも取り組み、緑演舎と連携して、オフィス空間の機能性を超えたご要望に応える提案を行いました。さらに、プロジェクトの一環として、オンラインスタジオの構築も進めており、NECネッツエスアイ社の協力を得ています。オンラインスタジオ構築はSIIにとって新たな挑戦であり、専門家の支援を受けながら順調に進展しました。私たちの役割は、これら多数の関係者とお客様のニーズを総合的に調整し、プロジェクト全体を統括することにあります。
リニューアルまでの道のり
RKKCS内藤氏:社内のメンバーと共に、オフィスの改善について議論しました。業界では「DX(デジタルトランスフォーメーション)」が注目されており、IT化だけでなく働き方や業務プロセスの改善が重要視されています。
RKKCS徳山氏:金子社長からの最初の指示は、「極秘で行うこと」でした。
本来ならば、多様な価値観を持つ人たちの意見を集めて検討されることが一般的です。しかし大きな変化を実現するためには、従来の価値観に縛られていては前進できません。そのため、プロジェクトの基本的な枠組みを決定するまでは、既存の価値観を排除してフラットに考える必要がありました。この方法は、革新的な道を切り開くためには必要な手段だったと思います。
SII田原:民主的なアプローチで意見を取り入れることは良いことですが、断固とした決定を下すのが難しい側面もあります。今回はコアなメンバーを選抜し、トップダウンの指示で進める方法を採用していただきました。そのためプロジェクトは事実上水面下で進行していましたが、デザイン性だけでなく、機能性の要望や背後にある思いも考慮して反映させました。
リニューアル後のオフィスのポイント
SII田原:オフィス内に明確な色分けをしてエリアを区切ったことが特徴的ですね。フィールドエリア、パークエリア、フォレストエリア、ゲストエリアの4つに分けられており、社員が自身の働き方やその時の時間帯に合わせて、最適な場所を選べるようになっています。従来のオフィスでは、デスクが均一に配置され、ほぼ固定席に近い状態でしたが、今回のオフィスデザインでは、オフィス内を自由に移動し、様々なエリアで働くことができるようになっている点が、最大の特長と言えると思います。
RKKCS内藤氏:ゲストエリアも、来客用のスペースとしてではなく、誰もが自由に仕事をすることができるエリアとして設計されています。そのため、社員はこのスペースを利用して、様々な業務を行うことが可能です。
RKKCS徳山氏:このゲストエリアに関しては、金子社長の意思が詰まっており、具体的な指示を受けながら構築した特別なエリアです。来訪者を驚きをもってお迎えし、会社の顔となる場所であるため、一切の妥協を許さず、こだわりを持って作り上げました。石やソファーをはじめ、実は非常に珍しいアイテムを多数配置していただきましたが、アイテムの密度が高く、なかなか一つ一つに注目して貰えないのが悩みです。
SII田原:このオープンエリアの空間は「空いている」というよりは、全体が一つの統一された環境を形成していますからね。空間全体やグリーンを通じて、様々なアイテムが自然に組み込まれているため、全体の雰囲気やコンセプトを表現している「空間」という印象が強く、特定のアイテムに焦点を当てるのが難しいという点は私も感じています。竣工写真を撮影して頂いた際に非常に魅力的な写真が撮れたので、それを活用してコンセプトブックを作成させて頂きました。クリエイティブな作品を作る際、説明がないとどのように利用すれば良いのかわからないことがありますが、単に取り扱い説明書を提供するのはあまりにも形式的で硬すぎるため、コンセプトブックという形でまとめることが増えています。これにより、プロジェクトの背景や意図、そして使用されているアイテムの詳細を、より魅力的で理解しやすい形で伝えることができます。
RKKCS内藤氏:コロナウイルスの影響により、多くの人々が直接顔を合わせて会議をする慣習に変化が生じました。この変化は、新しい働き方への移行を後押しし、多くの人がリモートワークでも効率的に業務が遂行できるということを実感できたようです。柔軟性のある働き方を支援するオフィス環境を整えることができたのは、非常に意義深いことだと感じています。もし作業をするだけであれば、単に机をたくさん並べれば十分です。しかし、ここに来る目的は、単に作業を行うだけではなく、価値ある仕事をするため、また人と会い、交流することそのものに価値を見出してほしいという願いを込めています。
SII田原:環境やビジュアルの変化は、私たちの専門分野であり、非常に重要だと考えています。オフィスや場所への投資は、日本全体として非常に良い方向へ進んでいると感じています。以前は、椅子に肘掛けがあるかどうかなど、ヒエラルキーが存在していましたが、現在ではそのような違いがなくなり、誰もが自由に座り、リラックスして仕事をする環境が整ってきています。オフィスの価値観が大きく変化している証拠だと思います。業務に関しては、在宅勤務やコワーキングスペースの方が静かで集中できるため、オフィスは、単に作業を行う場所ではなく、クリエイティブな活動や交流のための場所やより社交的な場所としての役割を強めていると言えるでしょう。通常のオフィス構築に比べてかなりの予算が投じられていることは事実です。ただ、オフィスのみに注目すれば費用が高く感じられるかもしれませんが、金子社長からお聞きした、CMやその他のPR活動を通じて迅速に回収が可能であるとの考え方から、このオフィスが持つ潜在的な価値を考えれば、決して高価ではないという考えを持つようになりました。このような視点は、経営層でなければなかなか持つことが出来ないものです。
オフィスは自社のアイデンティティを表現し、強力なメッセージを外部に発信する手段となり得ます。外部への見せ方は非常に重要であり、そのために大きな投資をしている企業も存在します。自分たちが快適に使えるオフィスをPRの一環として活用できることは、社員にとっての魅力でもあります。結果として、このオフィスは高い投資効果を持つと考えています。このプロジェクトでは、コスト面での最適解を求めるのではなく、クオリティの面で最高を追求することに注力しました。
SIIの印象・魅力・強み
RKKCS内藤氏:プロジェクトにおけるマネージメントの部分も対応して頂いたことも、私たちにとっては非常に嬉しいポイントでした。今回のリニューアルプロジェクトに関しては、これまでの経験を活かしつつも、新たな試みとして取り組んだ部分があり、初めての挑戦でした。運用に関連する部分以外では、内部の規則などについても、ほとんど全てをSIIさんに担当してもらいました。
SII田原:当社はリニューアルプロジェクトにおいて、豊富なノウハウをもっているため、移転や新規案件に特化した企業とは異なり、リニューアルに関しての専門性が高いことが私たちの特徴だと思っています。今回のプロジェクトでは、特にワンフロアをパッチワークのように段階的に工事を進める必要があり、これには我々の今までの経験がとても役立ちました。当社は、設計だけでなく商品の納品も行うため、プロジェクト全体の責任を一手に引き受けることが多く、この一貫したサービスが当社の強みの一つだと考えています。また、今回のプロジェクトではスタジオの構築やオンライン設備の導入など、当社としても初めての試みが多くありました。これらの新しい取り組みにより、オンライン対応の場所の構築など、多くのことをお任せいただきました。
社員や来訪者の声、感じられた効果
RKKCS徳山氏:外部の人々は、まず「こんなユニークなオフィスを作ったのか」という目で私たちのオフィスを見てくれますね。表面的には明確な変化が見えないかもしれませんが、他部署との交流が以前よりも増えていると感じています。会議を行うわけではなく、単に同じ空間にいることで、その人が何をしているのかが自然と理解できるようになる。これが非常に重要な点です。そういった意味で、新しい形の交流のきっかけは提供できているのではないかと思います。特にプロジェクトマネージャーや営業担当のように、様々な部署と関わる必要がある職種では、この新しいオフィスの空間が大きな役割をはたしており、隣に自然と座り、仕事を共にしながら会話を交わす時間が自然に生まれます。このような設計は、公式な呼び出しや会議を経ずに、より自然でフランクなコミュニケーションやヒアリングを実現しています。
SII田原:世代の違う社員同士が会話する機会はなかなか設けられないことも多いですが、この新しいオフィスデザインでは、若手とベテランが一緒に仕事をしているところに自然と加わり、会話に参加できるような環境が生まれています。固定席の配置では、このような自由な交流はほぼ不可能です。この設計により、異なる世代間でのコミュニケーションの機会が自然に増えているので意図していた効果が実際に表れていると思います。
RKKCS内藤氏:社員に与えた影響としては、本社からの注目度がわずかだが高まったと感じています。完成した時に話題となり、社内のSlackに写真を投稿したところ、特に若手の社員からの反応がありました。
SII田原:それをきっかけに、東京に行ってみたい、あるいは東京で働いてみたいと思う人も現れるかもしれませんね。
RKKCS内藤氏:実は、社員の声はポジティブばかりではないのですが、それは分かっていたことでもあります。フリーアドレスで、顔と名前が一致しないことによる混乱が指摘されていますが、私はそもそも誰がどこにいるのかを完全には把握する必要は無いと考えています。連絡を取る際は電話やチャットを通じて取り合えますが、それよりも偶発的な会話に参加できる方がずっと良いと思います。仕事とは、そういうものだと思いますし、個人的な繋がりが非常に重要だと感じています。
SII吉田:なんと表現すればいいのか難しいですが、同じように仕事を進めやすい人たちが集まることは、もちろん重要な一側面だと思います。従来型のオフィスでは、そのような点ではある意味で効率的だったかもしれません。しかし、その結果全てが縦割りの構造になってしまう傾向がありました。現在、私たちの会社だけでなく業界全体がある種の限界を感じている中、海外の例を見ると、従来の枠組みに縛られない働き方が広がっています。このような環境では、個々人の裁量やスキルによる差異がより明確になるかもしれません。ただ、一人ひとりが独立して取り組み、その成果が集合的に掛け算のように機能していくことが、今後の目指すべき方向であると考えています。みんなが同じ方向を向いて進むことによる安心感も大切ですが、自立して積極的に取り組む姿勢も重要だと思っています。
コロナウイルスの影響で上司や先輩との直接的なコミュニケーションが減り、雑談の機会も少なくなっています。その結果、仕事上の指示が主なコミュニケーションとなり、親密な関係が築きにくくなっているのが現状です。この点において、新しいタイプのオフィスは、そうした問題を解消し、新しい形のコミュニケーションや協働が生まれる場になる可能性があると思います。今後も様々な場面でリニューアルなどの機会があれば、是非ご協力させていただければと思います。引き続きよろしくお願いいたします。
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