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2023/05/29

住友商事 物流施設事業部インタビュー 〜SOSiLA中央林間PJにおける働きやすい物流施設へのチャレンジ〜

SOSiLA中央林間プロジェクトにてご一緒させていただいた「住友商事 物流施設事業部」の皆さまにインタビューさせていただきました。


住友商事株式会社 物流施設事業部 開発第二チーム
チームリーダー 鳥居 和弘氏:左奥
角 大地氏:左手前
福田 拓也氏:中央手前
赤月 一石氏:右手前

住商インテリアインターナショナル株式会社
第二事業部第3ユニット 宮田 悠生:右奥
デザインユニット デザイナー 岡村 美紀:中央奥


 SOSiLAとは

SOSiLA中央林間エントランス

SOSiLA

経済活動を支える重要な社会基盤である物流。
その枢要な拠点としての物流施設を、旧来のまま単なる物品保管庫としておくのではなく、企業の経営戦略を具現化し、社会全体を明るく快適にする施設として進化させるべきだと考え、住友商事が新しい物流施設として取り組んでいる事業が「SOSiLA」です。
SOSiLAは、Sociability(社会とのつながり)、Sustainability(環境との調和・持続的成長)、Individuality(人と労働環境への配慮)、Logistic Aspect(物流の在り方)を組み合わせた造語であり、「未来の物流の在り方を創造する」という理念のもと事業展開しています。

 住友商事 物流施設事業部の概要

角氏

角氏:2006年~2007年に物流事業部から依頼を受け、SGL(住商グローバル・ロジスティクス)茜浜物流センターⅠ・Ⅱ(SOSiLA習志野茜浜Ⅰ・Ⅱ)の建設をサポートしたのが最初の事業になります。
その後、2015年に物流施設ブランドを「SOSiLA」と統一し、物流施設事業へ本格的に進出しました。
以降、関東圏・関西圏で竣工を重ねまして、2022年に竣工したSOSiLA中央林間で15件目となります。
我々が所属する建設不動産本部の中でも、ビル、住宅、商業に次ぐ第4の柱としての地位を確立できたと思います。
総合商社・総合デベロッパー・金融事業といったグループネットワークを活用し、我々にしかできない物流施設を作ろうという心意気で臨んでまいりました。

SOSiLA中央林間

角氏:SOSiLA中央林間はシリーズ最大規模となる地上5階建て、延べ床面積約11万2000平米のマルチテナント型の物流施設です。
マルチテナント型というのは、各階にトラックを停車可能で、そこにそれぞれのテナント企業様に入居いただくことが可能な施設です。
駐車場、バイク置き場、トラック待機所も含めて、十分な台数のスペースを確保しており、シリーズ初となる危険物倉庫も併設しています。
危険物とは、身近なところではアルコールや制汗スプレー等です。引火すると爆発の可能性もあるため、法律上、周囲から10mの離隔距離が必要になりますが、制約条件を設計の工夫で乗り越え併設に至りました。これだけの都心に近い場所で、高水準の基本性能を兼ね備え、かつ危険物倉庫を併設しているという点は特徴の一つです。

SOSiLA中央林間の立地環境

角氏

角氏:中央林間は、神奈川県のほぼ中央に位置し、3つの鉄道が東西南北を走り、東京へ1時間弱、横浜へは20分でアクセス可能です。
周辺に人口も集中しているため、テナントさんが労働力を確保しやすい立地です。また近くに大きなインターチェンジが2つあり、都心部および広域にアクセス可能であると同時に、神奈川県内陸部の人口密集エリアに位置しているため、ラストワンマイル配送といって、最後に皆さんの家へ配送する拠点としても好立地です。

鳥居氏:SOSiLA中央林間は規模的には最大級・最高層、制振構造、危険物倉庫併設とSOSiLAとして初めて尽くしの建物であり、また企画・機能も最高級で、SOSiLAのフラッグシップと言える案件です。そのため、それに相応しいエントランス・ラウンジをSIIさんにご協力いただきながら設計しました。
まだテナントが全部決まったわけではないのですが、計画就労人口は、平常時ワンフロアで150人ぐらいですので、全体で7-800人かと思います。

鳥居氏

物流施設におけるカフェテリアの位置付け・役割

カフェテリア
赤月氏

赤月氏:すべての物流施設の中にカフェテリアがあるというわけではないのですが、最近、意識的に私ども自ら、単に倉庫や施設ではなく「物流不動産」と呼び、そういった物流不動産内には、カフェテリアやラウンジを入れるケースが増えています。
用途としては、基本的に倉庫内で働かれている方々や、ドライバーの方々の休憩スペースや憩いの場として設計・デザインをしています。
私自身、学生の頃に物流施設でアルバイトをしていたのですが、働かれている方は、基本的に何時何分に次の荷物が来るから、それを次はどこどこに持っていく…という分単位の張りつめた作業をされていることが多いです。
そういった方々が昼休みや、合間の休憩時間等短い時間でもカフェに寄っていただいて、自分の気持ちを整えて次の仕事に向かっていただけるような、リラックスできる空間を目指して作っています。
物流というと、依然としていわゆる3Kのイメージがどうしても残っています。カフェテリアはそこを払拭するための憩いの場としての意味合いもあります。やはり、人材の確保が難しくなっている昨今、働く方への配慮、環境を整えることは非常に重要だと考えています。シリーズ内のすべてではないのですが、可能な限りカフェテリアを併設していきたいと考えています。

ラウンジについて

鳥居氏:ちなみに、ラウンジの名前は「クルーラウンジ」と言います。物流施設を一つの船や宇宙船に見立てており、働く方々は乗組員、クルーということで、そう名付けています。
SOSiLAの「i」は、Individualの「i」なので、個人という意味です。
荷物を届ける「個人」、そして働く「個人」という両方の意味合いがあり、ワーカーフレンドリーという意味も込めています。雇用や離職の問題解決として、働いている方の満足度にも貢献できたらと考えています。
働いている方が「あのきれいなSOSiLAで働いているのね!」と、周りの方々に言われるような施設を目指しています。
SOSiLA中央林間では例えばパウダールームはこだわって作っています。パートで来られた方が、家事・子育ての中で忙しく、メイク直しの時間も無い。そんな際に、落ち着いて施設内のパウダールームでお化粧直しをしていただける、といったストーリーをイメージしています。個々人の生活に寄り添う形で作っています。

鳥居氏

SDGs等を意識した取り組み

リサイクル素材を使用したチェア 
福田氏

福田氏:SOSiLA中央林間は、まさにSOSiLAのブランドコンセプトを体現したような施設です。
テラスエリアに設置しているテーブル等は、SIIさんからご提案いただき、海洋投棄された漁網やプラスチックごみを素材として使用した家具や什器を採用させていただきました。まさに持続可能な物流施設というところを体現しています。
その他にも、震災復興支援ということで、東日本大震災を背景に生まれた石巻工房というブランドの什器を一部採用しています。そういった災害復興支援というところにも、SOSiLAとして、住友商事として寄与させていただいています。
その他、今は様々な働き方をするようになってきましたので、施設内の皆さまに、気持ちよく働いていただけるよう、様々な設備がございます。
無人売店、フリーWi-Fi、コンセント、個別のテレフォンブースも1台設けています。こちらもSIIさんからご紹介いただいて、従業員の方がちょっとした会議や電話等、あまり聞かれたくないようなシーンで活用できるスペースを設けさせていただきました。徐々に女性のワーカーさんも増えてきており、先ほど鳥居が申したパウダールーム等、女性目線での設備の設置も意識しています。
また、地域共生といった点も意識しています。
SOSiLA中央林間では、歩行者の方が安全に通行できるように、敷地境界線と車道の間に自主管理歩道を設けたり、敷地の一部をポケットパークとして地域の方に開放したりしています。

空間を決めていく過程〜SIIの役割

天板にOSB材を使用したテーブル
福田氏

福田氏:エントランスとラウンジは、インテリアデザインのプロフェッショナルである日建スペースデザイン(NSD)様にデザインをお願いしました。中央林間というちょっと自然味のある名称なのですが、そこに物流施設の工業的な部分が溶け込んだようなイメージということで、木製のルーバーと金属のアルミルーバーもいり混じって溶け込んだような空間にしています。工業的な部分に自然感をプラスし、少し安らげるような空間をデザインしていただきました。
そこにSIIさんも入っていただいて、そのデザインと調和する家具を選んでいただきました。私どものブランドコンセプトをご理解いただいており、家具の選定について、異論はほとんどございませんでした。

SII-岡村:NSD様のコンセプトを体現していくために、提案を何度も繰り返しました。
SDGsのコンセプトが入っている家具はたくさんあるのですが、その中から今回のテイストに合うものを選定しました。部分的なテイストをつかむためにいくつも提案を重ねました。
今回、テーブルの天板が造作なのですが、環境商材と言える、OSBという木材のチップを圧縮して作った素材をテーブルに使うという挑戦をしました。
出来る限りこうした環境にやさしい素材を使用していきたいという強い思いがおありで、Rを描いた窓際のカウンターテーブルは、製作上の技術的な側面、費用、デザイン的な部分の兼ね合いを解決するために、かなり細かく議論、検証し、最終的な形になりました。物流施設事業部様、NSD様ともに、熱意をもって引っ張っていっていただき、まとまりました。

SII-岡村
SII−宮田

SII−宮田:テーブル天板に使用したOSB合板は、木のチップを合わせているので、一般的には物流の梱包材等につかわれます。手触りががさつきますので、家具に使う天板素材として通常は不向きです。こだわりがあればこそということで、研磨、コーティングを繰り返して、手触りが滑らかになるようにオリジナルで制作しました。

角氏:特徴的な素材なので、当初一脚だけ見た際はこれが全面に入って大丈夫か…と思ったのですが、かっこいいですよね。
私の家にも欲しいと言ったのですが、オーダーメイドだから難しいという話でした(笑)。

SOSiLA中央林間のカフェテリアの特徴

SOSiLAブルーのチェア


SII-岡村:カフェテリア内にはブランドカラーであるSOSiLAブルーを背板と座面に施したチェアもおり混ぜて配置しました。本来既製品なのですが、SOSiLAブルーをメーカーに特注して製作する等、一品一品に大変なこだわりが入っています。

鳥居氏:このカフェテリアは、とても素敵な空間だと思います。早くテナント企業の皆様にたくさん使っていただきたいですね。
ところで、このカウンターのデザインを決める際に、物流施設ですので先端に固い素材を使用した安全靴を履いて利用される方もいるため、前面のガラスを割ってしまう可能性があるのではないかという課題が挙がりました。こちらを解決するのは大変だったのですが、SIIさんがモックアップや動画の作成、デザイン、そして実演まで根気強くしてくださり、なんとか実現することができました。

鳥居氏
カフェのスマートガラス使用部
SII−岡村

SII−岡村:図面上ではどうしてもわかりにくく、作ってお見せするほうが分かりやすいと思いました。何度もこれじゃ駄目と、ダメ出しがありました(笑)
通常は幕板といってパネルを前に取りつけるのですが、今回はガラスが、肝煎りの大事な部分で、景色が見える「抜け感」を出したい、一方で壊されたくないといった、相反するご要望を実現しなくてはなりませんでした。
なるべく窓から離したり、天板の奥行きを少し深くしてみたり、バーの位置を上げたり下げたり・・・細かな調整が必要でした。

福田氏:このガラスですが、スマートガラスといって、すごい機能を持っています。
屋上に設置したセンサーとAIを利用し、日射量や屋外の状況に応じてガラスの色が変わる仕様になっています。
まぶしい時間は少し曇らせると空調効率が良くなりますし、ブラインドを都度下げる手間も省けるのです。せっかくこのガラスが全面、上から下まであるのに、それを隠してしまうというのはもったいないですよね。また、やはり太陽光をできるだけ室内に入れたいという思いもあります。
こちらも中央林間のアピールポイントです。

福田氏

SIIとの協働の感想と今後の展望

鳥居氏:SOSiLAは、まだ立ち上げて7、8年の若いビジネスです。
こういったラウンジやカフェの施工には関わったことがない担当者もたくさんいます。
SIIさんには、当社がこれまで培ってきたビル事業や住宅事業で、大変お世話になってきました。私たちの考えていることをよくご理解いただいているので安心感があります。
図面や写真、メールだけではなく「ものを見てください。」と、本物を見せてくださるスタイルも高く評価しています。
私たちはまだまだSOSiLAを確立していく途中ですので、SOSiLAの事業、業容の拡大と共にご一緒に歩めたら嬉しく思います。

角氏:私はこちらの部署に来てまだ2年でSOSiLA中央林間が初めての現場だったため、当初は家具の選定・配置等も手探りの状態でした。SIIさんには中央林間の現場定例会議まで来ていただいて、家具選びのコンセプトやこだわりを対面でご説明いただきました。
質問すれば都度丁寧に答えてくださり、大変勉強になりましたし、ご一緒させていただきよかったと感謝しています。

赤月氏:昨年の春からこのプロジェクトに携わっており、プロジェクト途中からの参加でしたが、ラウンジを作る過程での、スマートガラス設置の件が特に印象に残っています。
幕板を取り付ければ解決するということなのですが、そこに対して単に楽な方向を選択するのではなく、しっかりと議論を重ねてくださいました。
私たちの意思決定が必要な際には、シミュレーションやサンプル等、常にリアルなものを見せていただき、竣工のときのイメージがしやすく、とても助かりました。ありがとうございました。

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インタビュー実施:2023年2月14日