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2024/03/21
Wendelbo x Kvadrat 新作展示会 Review
2023年11月にKvadrat青山ショールームにてWendelbo x Kvadrat 新作展示会を開催しました。
合同開催の「kvadrat Japan 株式会社」ご担当者にインタビューさせていただきました。
Kvadrat Japan 株式会社
関塚 更紗 氏
住商インテリアインターナショナル株式会社
宿南 幸江 ブランドユニット ユニットリーダー
Wendelbo x Kvadrat 新作展示会開催の背景
SII 宿南
住商インテリアインターナショナルでは家具を中心としたインテリア商品を法人様向け(コントラクト市場
向け)に提供しています。国内外の様々なブランドを用いたコーディネート提案や空間提案を行っています
が、この度弊社で多くの提案実績のあるブランドの中から、共にデンマークブランドであるWendelboと
Kvadratの合同開催を企画し、同じくデンマークブランドのLouis Poulsenの照明やFRITZ HANSENのアクセ
サリーを含めて、各社の取組みや特性を体感できる場としての、展示会を開催いたしました。
Wendelboはデンマークに本社を置くソファやラウンジチェアなど張り物の得意な家具ブランドですが、
Kvadratの張地をよく利用しています。Wendelboの家具はホテル、カフェテリア、オフィスやラウンジなど
公共の場所で採用されることが多く、Kvadratは機能や品質の良さのみならず、色柄やデザインのバリエーシ
ョンが豊富なため、エレガントなデザインのWendelboの家具にも非常に良く合います。Wendelboの家具も
国際的なデザイナーによってデザインされており、グローバルな市場でも認知度の高いKvadratの生地は、商
品や空間の提案の際にもお客様や設計様からご採用頂く機会が多くあります。
今回はその素晴らしいテキスタイルが展示されるKvadratの素敵なショールームにて、実際に家具に張りこん
だ状態をご覧頂き、用途や形状に合わせた仕上がりの様子を一緒に体感できる空間を提案したく、共同開催
のお声がけをさせて頂きました。
Kvadrat 関塚氏
当社はデンマークに本拠を置くインテリアのテキスタイルメーカーです。
元々は家具の張り地からスタートしたブランドですが、現在では家具の張り地、ラグや吸音パネルも取り扱っ
ています。デザインはグローバルに、世界中のデザイナーとのコラボレーションによって生み出されており、
中には日本人デザイナーもおります。製品にラベルがついているようなブランドではないため、馴染みが少な
いかもしれません。
しかし、実は当社の生地は、ミラノサローネをはじめとする様々な展示会で出展される製品の約70%に使用さ
れています。パンデミックを経て、大きな会場に人を集めて商品を宣伝する従来の方法を止め、世界に30か所
以上あるショールームを積極的に活用するようにとの方針が社内で打ち出されたこともあり、これが今回共同
展示を開催するきっかけにもなりました。
五感に響く展示会
SII 宿南
住商インテリアインターナショナルは、お客様の要望に応じて、最適な商品やソリューションを提案すること
を得意としています。商品単品をおすすめするだけでは伝わりにくいので、できるだけ多角的なアプローチを
行う事でお客様に解決策を多くご提案できるよう心掛けています。
私は以前から、社内展示会では「五感すべてに訴えかける触れ方」を実現したいと考えていました。自分自身
が普段色々と情報収集をしてきた中で後々お客様へのご提案で活きてくる事は五感で感じられたもの
が多く、お客様にも同じように感じて頂ける空間を提供したいと考えていました。
kvadratは見た目だけではない音に関する商材など複合的な商材を持っているので、家具や照明、花瓶や小物
などの商品的なことだけではなく全体の空間および機能としてご提供できる奥行きを表現したかったのです。
展示商品のご紹介
Kvadrat「Sport」& 「Re-wool」
SII 宿南
今回Kvadratからは、海洋ゴミをリサイクルした「Sport」というサステナブルな新商品が紹介されていまし
たね。Kvadratの商品に対する私のイメージでは、厳選されたウールを使用した布地や難燃性のポリエステル
を使用したカーテンなど、材料へのこだわりが深いという印象も非常に強いです。
Kvadrat 関塚氏
「Sport」は100%海洋ゴミを使用しているという点でも世界初です。
それとは別に、弊社の製品開発においては、リサイクルウールを使用した「Re-wool」があるのですが、そち
らはリサイクルウールを45%使用しているのです。なぜ100%リサイクル素材ではないのかと思いますよね。
実は100%で製作してしまうと素材の色が黒くなり、それを染色しようと思うと、とても強い染料を使用しな
ければ、色が乗らないのです。そうなると、化学染料をそんなに多く使用してはかえって環境に良くないとい
う問題があるのです。そこでバランスをとって45%リサイクルウールをベースにし、その上に新しいウールで
ステッチを施し彩りを添える形での生地にしました。どこかで思考停止してしまわずに、どういうものを製作
したいのかというところを大事にしています。サステナブルな製品を目指しながらも、意匠的に優れ、また高
耐久性も実現するような製品を製作しています。常に製作に真摯に向き合っているというところは、我々のブ
ランドの特徴です。
Wendelbo Montholon & Glyph
SII 宿南
Wendelboの「Montholon -モンソロン-」は、回転する新作のソファですが、前からだけではなく後ろから
見た姿もエレガントで非常に美しく、ラウンジエリアなどさまざまな空間に置くととても映えるソファシリ
ーズです。またシートが自動的に元の位置に戻るオートリターン機能も持っているという点も、お勧めのポ
イントになります。
Kvadrat 関塚氏
限られたスペースに置きたいので小さくしたいけれど、デザインの美しさはそのまま維持したいといったリ
クエストがありましたが、Montholonでしたら回転しても自動的に元のポジションに戻るので、狭めのラウ
ンジでも使えますね、というような少し踏み込んだ具体的な提案が出来ました。設計事務所の方々も特にこ
のサイズで回転ができるという点が素晴らしいと仰っていましたし、また回転する部分が見えないため「雲
みたいに浮いている」と表現されたのがとても印象に残っています。
SII 宿南
Montholonと一緒に展示していた「Glyph –グリフ- 」というテーブルは、彫刻的な脚とガラス天板で構成
されています。コントラクトの案件では普段提案する機会は少ないタイプの商品ですが、こちらは天板と脚
が固定されているので、安全面も考慮しながら空間にアクセントを与えるデザインです。
Kvadrat 関塚氏
このテーブルは、ビスが見えないように設計されていました。設計事務所の方々の中には、造作家具を作っ
ている方も来場されており、「ビスが見えないようになっているのが素晴らしい」と熱心に話されていまし
た。その点も含め、私は素人目にただ美しいと感じていましたが、普通なら見えるはずのものが見えないの
で美しいのですよね。
吸音効果のある商材
SII 宿南
今回は吸音効果のある商材への反響が大きかったです。
Wendelboの「Case –ケース-」という商品は、背面と側面がコの字型に囲われて、外からの騒音を軽減して
くれるとともに、席で話している内容が外部に聞こえにくいことが特徴です。
昨今のオープンミーティングのエリアにてよく採用されています。
Kvadrat 関塚氏
KvadratのAcousticsという吸音パネルは、90%以上の吸音率を誇る製品です。吸音効果が高いため壁全面に
貼る必要はなく、極端に言うと耳の高さだけに設置するだけでも効果がありますというお話ができました。
SII 宿南
空間に対してのソリューションとして、家具で解決できること、カーテンで解決できること、張り地で解決
できること等、色々解決策はありますが、別のアプローチとして、音に関する問題に困っているお客様に吸
音素材での解決策をご提案できますね。
Kvadrat「HAKU」
Kvadrat 関塚氏
「Haku」という機能性テキスタイル、ポリウレタンを用いたエコレザーが今回の一押し商品となりました。
商業用の製品を探しているお客様は、布の美しさと、不特定多数の方が使用されることを想定して、機能性
も兼ね備えたものをご希望されることが多いです。この「Haku」は数年前にローンチされた商品で、見た目
はスムースレザーのようでありながら、爪の跡がつきにくく、布製品では汚れが拭き取りにくかった部分も、
この商品であれば何かをこぼしてもすぐにさっと拭き取ることができます。社員がコーヒーをこぼす可能性が
あるけれども、白い椅子生地を使いたいといったご要望に応えられる商材です。
Kvadrat 関塚氏
色味に関しては、柳原照弘さんに万葉集をイメージして選んでいただいた繊細な色合いで、日本のお客様が
望んでいたエコレザーの色が揃っています。白にも2色、黄色にも2色といった具合に、ニーズに応える幅広
い色彩の選択肢を提供することで、お客様の求めるところに手が届く商品となっています。
これまで市場には撥水性を持つ機能性商品がありましたが、塩化ビニールを使用したビニールレザーが主流
であり、その健康への潜在的な害に関する懸念から、弊社では製品化に踏み切っていませんでした。今回ポ
リウレタンを基材とし、その上にシリコンコーティングを施すことで、サステナビリティを保ちつつ、耐久
性を備え、さらに柳原さんが選んだ色を取り入れることで、デンマークの製品に共通する美しさと機能性を
兼ね備えた製品を開発することができました。
この新しいテキスタイルは、Wendelboの家具にも使用することができます。コントラクトユースに合わせ
て座面のみ「Haku」を使用する場合にも、カラーバリエーションが豊富なため、背面に合わせる布との組
み合わせを楽しめます。このため、私たちの一押しの商品です。
SII 宿南
空間コーディネートを行うために、設計の方々は空間の色味を非常に重要に考えていらっしゃいます。例え
ば黄色と言っても非常に多くの黄色があり、この黄色は良いけれど、その黄色はだめと言われる事が良くあ
ります。Hakuは色バリエーションも多く、Wendelboだけでなく、他の商品にもコーディネートがしやすそ
うですね。Kvadratの製品は色だけでなく、機能性やコンセプト、サステナブルな取組などお客様へ響く要
素が非常に多いブランドだと思います。
ニーズの変化
Kvadrat 関塚氏
最近は、明確なご要望が多いと感じます。
以前は「北欧のインテリアが好きなので・・」といった何となく漠然としたご相談内容が多かったのですが、
最近は「具体的にこういうふうにしたいから、どうしたらいいですか?」といった、ご相談をいただくことが
増えているように感じます。
例えば、コロナ後にはよくある話ですが、コロナは明けたが、在宅勤務が良すぎて社員がオフィスに戻ってこ
ないというご相談ですね。出社率が低下した要因の一つとして、集中したい時に周りが騒がしいといったケー
スがあります。このように以前のような単に椅子の張地を変えたいというようなご相談よりも、部屋の音響環
境を改善したいという具体的なご要望が増えました。
SII 宿南
今後よりサステナブルな取り組みが進んでいく中で、家具を買い替えるのではなく、張り替えで対応するとい
った需要も増えてくると思います。そういった場合も、新しく別の生地に張り替えるという提案もできます。
さらに今後kvadratとご一緒する機会が増えていきそうですね。
Kvadrat 関塚氏
私たちが提供する製品は、意匠性と耐久性が共存している点が特徴の一つであり、このバランスがお客様にと
って魅力的な解決策となっていると思います。
共同開催の感想
SII 宿南
会場がある意味ワークショップにも似たような雰囲気となり、ご意見やご要望、疑問などをお気軽にお話しい
ただける雰囲気にできたので、楽しかったです。SII、Wendelbo、Kvadrat、来場者の皆さまが一つのプロジェ
クトに一緒に取り組んでいるような感じですね。これは普段の展示会とは大きく違ったポイントだと思います。
Kvadrat 関塚氏
一緒に開催している様子がいいムードだと、いらっしゃるお客様にも伝わるのでしょうね。お客様もリラックス
されている感じがしました。その点も今回ご一緒できてよかったかなと感じました。
今回の共同開催で、Wendelboとつなげていただいたことは非常に大きいです。
写真撮影もできたので、今後は設計事務所などのお客様にも、Wendelboの家具に当社の生地を張った写真もお
見せできて、より具体的な提案ができるようになりました。SIIが取り扱ってますよと、自信をもってご紹介でき
るようになったと思います。会場では、具体的に進行中のプロジェクトで提案するとおっしゃった設計事務所の
方もいらっしゃいました。設計事務所の方々が施主に対してプレゼンする際に、実際に座ってみた体験を話せる
ことは大きな強みになると思います
SII 宿南
今回、Wendelboの家具を生地のメーカーから見ての印象というのを初めてお聞きでできたのですが「この張り
方が上手だね。Remixをうまく張ってくれているね。」とおっしゃっていただいて、Wendelboの生地を張る技術
の高さを再認識できて、嬉しく感じました。
今後の最新情報
Kvadrat 関塚氏
今年もミラノサローネでは、現地のショールームを使っての発表を行う予定です。リサイクルウールRe-Wool
が色を新たにRe-Wool2として発表されます。
SII 宿南
Wendelboも年間を通じて3回程度、新作を発表している中で、2月には既に新作がいくつか発表されています。
これらの新作は、ウェブサイトで少しずつ公開されており、Wendelboらしい張りの良さを生かしたラウンジ
チェアやソファなどが発表されていますのでご紹介する機会を持ちたいと考えております。お客様が新しい
デザインや商品を求めている中で、ソリューションを提供していくことが、私たちの会社としての使命の一つ
であると感じております。今後も幅広い提案、多角的な提案に向けてメーカーの垣根を繋ぐ情報展開をしてい
きたいと思っています。
この度は、Kvadratさんには、多大なるご協力をいただき、誠にありがとうございました。今後様々なプロジェ
クトで共にワークすることもあるかと思いますが、引き続きよろしくお願いいたします。